obakenokuni

心を折るくらいでは細い骨さえ砕けず、気づけば勝手に生きている。体が揺らぐと重力に合わせてステップが始まる、私たちは転ばないように踊るすべを覚えた。三拍子を二本の足でさばけるのが不思議だ。 いつも少しだけ余計であることが永遠へ続き、至らないで…

take/off

バラバラになってからからの白い体を、箸で拾い上げて壺に積み入れる。きみはどこを切っても同じ顔が出てくる飴に似てた。まっすぐに練られていてどこまでも均質であまくて。だからこんなに複雑で繊細な形をしていたことにちょっと驚いてしまった。きっとみ…

xy

あなたはたくさんの感情をやたら煮詰めては甘くしていたが、それを掬って塗りたくったり差し出したりはしないようだった。ただ瓶に詰めて蓋をしてラベルを貼る。かたづける。あなたのやり方が新鮮で、どうも勿体ないようにも思えたけれど、迷いのない手つき…

うつらない

母は中華飯店とキャバレーで働いており、父は何の仕事かわからないがロックミュージックを好み、自宅でライブの映像を見ながら友人たちとパーティーをしていた。二人ともよく飲み、笑っていて若い。 彼らの写真を撮ったり音声を録ったりしていたのだが、母が…

ダンスフロアのかぐや姫

「暗」にも「闇」にも音があってやさしい音楽の根であり寝床、ゆりかごかもしれない場所 だからあの子は目を瞑って音に泳ぐのねまるで生死の果てに帰っていくみたいな安心しきった顔で 瞬きの間に彼女が体ごと消えるんじゃないかときりきりと気を張って見て…

みたいの

自分の中に神や国を見つけられなかったひとたちが考えるのをやめてつくった呪文がある起動するとぼくみたいのができるぼくみたいの、は群生する 水平線を横並びに座ったまま見ている|昔は「おりじなる」っていうのがあって|意味がないのに歌ったり|ひたす…

致死量に至らない自己愛

ロックンローラーは甘い物好きでバナナとベーコンとピーナッツバターを挟んでホットサンドにして日々食べてぶくぶく太ってそれで死んだというのは噂 好きなものを好きなだけ何も悪いことをしていないそれでも体はいのちを裁くからいちばんカロリーが少なそう…