みたいの

自分の中に神や国を見つけられなかったひとたちが
考えるのをやめてつくった呪文がある
起動するとぼくみたいのができる
ぼくみたいの、は群生する

水平線を横並びに座ったまま見ている
|昔は「おりじなる」っていうのがあって
|意味がないのに歌ったり
|ひたすら踊ったり
|ぜんぜんちがう言葉同士で伝えたりしてたんだって
|みんないっしょじゃなかったんだって

それはすごいね、と応答する
たくさんのぼくたちは相互の思考を雲に投げて
つねに同期しながら進むので
返答は誤差修正を通知するトリガーでしかない
「きょうかん」という概念があったらしいけど
それはぼくたちのやり方といったい何が違うんだろう

ぼくがぼくみたいじゃないものと一緒にいることを理解できないし
ぼくみたいなもの以外に会ったり喋ったりすることがよくわからない
それはきっと最初の呪文を編み直すことと似てるはずだ
そんなことをしたら機能しなくなって
ぼくみたいのはもうできなくなるかも

ちなみに水平線は昔「むこうがわ」って意味だった
ここは四角く囲われているから
今は単に箱の一辺の壁の立ち上がりのこと
時々考えてみる
あの下線を破いたら
壁が「むこうがわ」になるのかもしれなくて見てみたい
ぼくはその言葉の意味がわからないから
適切な方法が導けているかは確信がないけど