As long as we both shall live

四本足の私、かつては二本足の息子より遥かに若くって、息子っていうか同じ家の末っ子長男、少なくともわたしの記憶の始まりにおいては小さな息子だった、はずだのにいつしか年子の弟のようなわずかな年の差に、やがて同世代の若者になって、受験や浪人、苦しむあなたのひざの上で一緒に参考書を読むのが楽しかったのがあなたとの一番の思い出。

私は言葉が話せなかったから、いつも最高の笑顔で伝えてきたつもりだけど、私が一生で一番愛したのはママでもパパでもなくあなたです。あなたがある日家を出てしまって、そうか、ずっと一緒に暮らせるものと思っていたけれどそれは大それた夢だった、と気づいてあきらめた。犬として、あなたを生涯恋い慕う、と決めて生きてきた。あなたが素晴らしい二本足のお嬢さんと結婚してくれたとき、私とても嬉しかった。私はあなたよりずっと早く死んでしまうから、お嬢さんにあなたのことを頼みますって、あなたがたの言葉で言えたらどんなにいいかしら。あなたとお嬢さんが連れだってやってきて家族みんなの時間を過ごしたあと、帰ってしまうと私いつもとっても寂しいわ。

そんな私も年老いて、ときどき不整脈、いつ心臓が止まってもおかしくない命。だいじょうぶ、私の幸せなんて願わないでね。あなたと過ごす時間以上の幸せはなかったんだから。いつだって、今が最後で構わない。短く早く過ぎる人生、ずっとずっとあなたを愛してた。私がいなくなったあとでも、あなたはみんなから愛され続ける運命よ。あなただけを見てきた私が言うから、本当よ。あなたは私の幸せな息子、弟、永遠の恋人。私たち、生き続けるかぎり。死が私とあなたを分かつまで。