makiko

心技体

好きだった菓子も律して食べないようにしているうちに、不思議と好きではなくなった。均質な甘さより筋質の厳しさを選び取っていった結果、身体は強く、堅く頑なに成り果てた。いつも今日が人生最後であっていいように、今日が人生最後の日であるかのように…

ミックスキャンディ・トーキョー

中野のあの店はまだあるだろうか、と急に思った。生まれてこの方東京から出たことのない私が、再びそう遠くないエリアに引っ越してきて一年半が経つくせに、中野には滅多に行かない。用がなかったら行かないし、用が出来るような町でもない。そういう町は幾…

赤い花束

墓の前だった。目を上げた先はよく晴れた空と緑の丘で、そこにNは立っていた。男がNだということと、彼が真っ赤なカーネーションの花束を持っていると私が認識したのはほぼ同時だった。Nが買う花といえば、カーネーションしかなかったからだ。彼の母は、五月…

美しい没入

ダンスフロアから束の間の帰還、彼は熱心に昨日観たドラマの話をしていた。私も観たよそのドラマ、と言うと身を乗り出して喜んでいたけど、体を私に向けて話しても私を見てはいず、自分の見たもののことだけ思い出しているのがわかるから、悪気なく明るく、…

一生涯でいちばんいい時代

灯りのない方が、考え事には意外と向いてる。ここは暗闇でしかない、と思う時にいちばん思考の癖が出る。ついでにあなたの夢にも出てしまって人生が面倒に交差する。自分より下と思える相手じゃなきゃ馴れ合えないし、どの居場所もひどく所帯じみて醤油とみ…

ラッキーカラー

毎日、ラッキーカラーを取り入れる。ヘアアクセサリーからカーディガン、アイシャドウ、靴に至るまで、その色を手持ちで揃えることができるよう、朝のテレビ番組とブックマークしたウェブの占いをまわって調べ尽くす。今日はエメラルド色に光るグリーンだっ…