ラッキーカラー

毎日、ラッキーカラーを取り入れる。ヘアアクセサリーからカーディガン、アイシャドウ、靴に至るまで、その色を手持ちで揃えることができるよう、朝のテレビ番組とブックマークしたウェブの占いをまわって調べ尽くす。今日はエメラルド色に光るグリーンだって、素敵じゃない? でも私、グリーンのバッグを持っていない。揃わないからやり直し。気に入るまでラッキーカラーを選ぶ行為は、もはや与えられた幸運ではなく魔除けじみた逃避だ。

彼女はじゅうぶん美しいのに、年のせいで肌の黒ずみが目立つし、そのわりに腕だけが白すぎて、まるで水死体のように見えることを気にしている。多くの寂しげな人間がそうであるように、彼女は何かを美しいと感じることに確信が持てない。自分も他人も造形物も風景も、言葉も体もおこないも、目に映るすべてをどう感じるか、それを信頼してもいいのかわからない。

いつもお綺麗ね、お色味がお顔に映えて似合ってらっしゃるわ。そう言われたときは、困惑しながら、指先までめぐる温かさを噛みしめる。ありがとう、嬉しいです。でもこれはラッキーカラーのおかげだと、わかっているからやめられない。